2011年1月10日月曜日

算数の時間


ありすは泣いていた。

「算数は体でおぼえるのだ!」
うさぎ大佐の叱責はつづく。
「A たす B は F だ、ありす。何度言わせる気なのだ」
あんまり強く言われていると、なんだか A+B=F が当たり前の事実のような気がしてくる。
「もう時間がない! あのAの扉をくぐってBのヤカンを持って、藤原さんに会いに行くんだ!」
いつから借り物競走になったのか。
そんな疑問をはさむ前に、うさぎ大佐の叱り声が追いかけてくる。
「ありす、時間だ。時間だよ!」
ストップウオッチ片手のグラサンうさぎが怖い。

ありすはうなされていた。
学校に行きたくないお年頃の夢。
ありすには安心して眠れる隠れ家が必要であった。
そんなありすをわかってくれる誰か。
大佐のストップウオッチのない世界。
違う世界へつづいている秘密の道。
今の世界のほかに、たくさんの世界があることを知らない。
君のできることがつながっていく世界。
そこでは ありす、君は輝けるんだ。

でも、ありすはなかなか目が覚めない。
やっと藤原さんにヤカンを渡したのに、お湯を沸かしてなかったことに気づいてAの扉へ戻っていくところであった……。