2011年1月18日火曜日

新説「ガリバー」



銀の槍がガリバーの肉体に突き刺さる。
小人たちは容赦ない。
ガリバーの背中は銀色の針山のようになっていった。

ガリバーは思い出していた。
自分より小さいと小人を小バカにしていたこと。
小人に「デクノボウのチンチクリン」と言われたこと。
大人げないが、それで戦争までした。
たくさんの小人の家を破壊し、ガリバーは寝ている隙に大量の鼻毛を抜かれた。

だが、それも思い出だ。
今は互いの良さを理解している。
この前は山から程よい小枝をたくさん集めた。
それで小人たちの家を新築するのだ。
でも、ちょっと張り切りすぎて腰を痛めた。
そんなガリバーを見て小人たちは顔を見合わせた。
「オレたちにマカセよ!」
小人たちは口々に「実は鍼灸シッテる」「ここツボ」「角度がダイジ」
などと言うが早いかザクザクとぶっとい槍を突き刺してきた。
痛い。
好意はありがたいが痛い。
腰の痛さより痛い。
なんか間違ってる痛さな気がする。
しかしガリバーは耐えた。
戦争で味わった朝起きると鼻毛がない恐怖、家を失って小人たちの顔が引きつって…そんな顔がいっぱい…。
あんなのはもうイヤだ。

この「はりきゅう」に耐えて、明日も小人たちと山に行くのだ。
少しずつ分かり合うのだ。
そうだ。
「もう少しやさしく刺してくれないか」
「ワカッタ」
小人たちは、どうやら強く刺さないとガタイのでかいガリバーには効かないと思い込んでいたようだ。
ガリバーはまた一歩小人に近づけた気がした。